僕はただ静かにDQMSLをしたいだけなんだ。①

 


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クリーム色のカーテンの隙間から眩しい朝日が差し込み、スズメの囀りで目を覚ます僕。んん、沢山寝たな、今何時か...うぉっと!ベッドから目覚まし時計に手を伸ばし、時間を確認すると変な声が自然と漏れた。もう時刻は8時近くを指している、どうやら無意識のうちに目覚まし時計を消していたようだった。あー、やっぱ昨日遅くまでネット観ていたせいかよ、クッソ!僕は慌てて飛び起き、とりあえず洗面所でバシャバシャと顔を乱暴に洗い、歯磨きしながら適当にはねた髪を整え、髭剃りを手早く終えヨレたスーツに着替えて家から飛び出した。

 

息を切らし全力で走っていつも乗る時間の電車に飛び乗り、満員の人に押し揉まれる。毎日毎日飽きもせず繰り返される日常。特にコレといった熱中する趣味はなく、最近は昔ハマってたドラクエのゲームアプリを片手間で始めたくらい。やる気のない仕事を無難に終えて帰るとご飯食べながらつまらないテレビを見て、ベッドに潜り込んでネットを見ながらいつの間にか寝る。はぁ~、こんな退屈な毎日辛すぎかよ。たまに買って読むラノベみたいに、僕も異世界に行ってチート過ぎる能力手に入れて、可愛い女の子にくっそモテて、それで、

 

ガタン!

 

突如激しく電車が揺れ停車した。いきなり過ぎて、僕の身体はゆっくりとスローモーションのように倒れ込む。左手に持っていたアイフォンが先に投げ出され、電車の床に叩き付けられると、眩い光を放ち僕を包み込んだ。ッ!光が強すぎて、僕は思わず目をギュッと瞑ったのだった。

 

っと、あぶねー、あぶねー!

 

危うく転ぶとこだったぜと踏ん張ったつもりが、目を開けて見渡せばそこは電車の車内では無かった。穏やかな雲が流れる草原、森や遠くに見える山々がある。は?どこだここ?僕は確かに電車に乗ってたハズだ、物凄く揺れて一瞬停電みたいに暗くなって、それから...

 

「驚いているみたいだね!」

 

どこからともなく声が聞こえる。

 

「やあ、よく来てくれたね、待ってたよずっとキミを」

 

辺りをキョロキョロしても、声の主は見当たらない。怖い。僕は見えない声の主に向かって恐る恐る声を振り絞った。

 

「だ、誰だよ!」

 

「ごめんごめん、上を見てよー」

 

僕は怯えながらゆっくりと顔を上げると、真っ白な毛玉がスーッと目の前に現れた。その、白い毛玉から変な触覚みたいのが1本生えていて。突如その毛玉はくるんっと回転したかと思うと、いきなりその顔が真正面に現れたのだった。

 

「やあ、初めまして。ぼくはわたぼう。」

 

毛玉が喋った。と同時にわたぼう?と疑問が起こる。わたぼう?わたぼうって言ったら、僕が今やってるドラクエのアプリのあのわたぼう???え、なんで、わたぼう?色々と理解が追いつかなく、驚き戸惑っている僕にわたぼうは大きな黒い瞳をぱちぱちさせてゆっくりと近づいてきた。

 

「ここはね、かつて人間と魔物が仲良く暮らす世界だったんだ。」

 

「それなのに最近突然魔物が暴れ出しちゃって、人間が姿を消してしまった。」

 

「また前の様に人間と魔物が仲良く暮らす世界に戻したい。そのためにキミにこの世界をまわって原因を突き止めて欲しいんだよ。」

 

「は?え、何言ってんの?」

 

「キミは選ばれたんだよ。お願いだよ、この世界を救ってくれないか?」

 

わたぼうの説明に色々理解が追いつかない。まって。ここは僕のいた世界じゃないのか?この平凡なサラリーマンの僕が、世界を救う?どうやって???

 

「そうだよね、突然キミにこんな事言ってもびっくりするよね。大丈夫だよ、キミには頼りになる仲間をあげよう。それ!」

 

わたぼうが腕を軽く上げると、煌めく星のような光と共に、目の前に3匹のモンスターが現れたのだった。

 

「キミはどうやらこの魔物系に好かれてるみたいだね。ひどく珍しいけど...」

 

「右からゴースト、がいこつ、ナイトウイプス。全員ゾンビ系だ。」

 

「キミとモンスターで、この世界を救ってくれ!」

 

 

 

 

僕はただ静かにDQMSLをやりたいだけなんだ。
 

 

 

 

 続く