僕はただ静かにDQMSLをしたいだけなんだ。⑤

 


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がいこつとその父ヴァルハラーの感動の再会。しばし二人は固く抱き合った後、そっとがいこつが離れると父はゆっくりと重い口を開く。

 

「お前がな、この村を出て間もなくこの世界の歯車が狂ってきた。住む場所こそ分けていたが、人間と魔物はそれなりに上手く付き合っていた。なのに、」

 

「少しずつ、小さな、つまらない諍いは絶えず起き、繰り返し、人間と魔物は完全に交流を絶ってしまったのだ」

 

「私はその前から何かがおかしいと思っていたのだ。けしてどちらが悪いという事もない、だけれど諍いは一向に絶えぬ」

 

「私は確信した。これはきっと、何かしらの別の力が働いているのだと。そんな時、お前は私と些細な言い争いから村を飛び出して行った。そして間もなく奴らがこの村を襲いに来たのだよ」

 

父はやや視線を落とし、布団をギュッと握りしめる。その手は恐怖からなのか、小刻みに震えている。

 

「魔物の村をな、突如として得体の知れない魔物の軍団が襲いに現れたのだ。無論、私を始め皆は魔物同士での争いはしたく無かった」

 

「奴らは我々が戦意の無い事を良いことに、村を、畑を、そして我々の全てをを踏み躙った」

 

「このままでは我々は全滅してしまう。私はこの身を差し出して、たとえこの身が滅しようとも奴らから守りたかったのだ。私は意を決して奴らの前に立ちはだかった、その時」

 

「奴らは、いや、奴らのリーダーと思わしき奴は、私に眩い波動を浴びせかけた」

 

パニッシュメント、ハッとして僕は思わず呟いてしまう。今でこそ弱々しく床に伏せているヴァルハラー。ここまでの力のある上位モンスターを衰弱させるに等しい技といえば、パニッシュメントしか思い浮かばない。俗称聖なる処罰と言われる、アンデッド系モンスターが恐れる技。パニッシュメントを使える上位モンスターと言えば限られて来るはずだが、何故この村を、ヴァルハラーを襲ったのか検討が付かない。んんんと頭を悩ませながら考えている僕。

 

「私はその聖なる処罰を受けてしまった結果、不死の力を失い、以前の様には動けなくなってしまったのだ。情けない話だが、」

 

「お話の途中で申し訳ないのですが、少しよろしいでしょうか?私の記憶が間違っていなければ、アンデッド系モンスターのあらゆる病を治す花があるとか小耳に挟んだ事がございますが?」

 

ナイトウイプスがふわふわと浮遊しながらヴァルハラーに問う。

 

「さて、私もそのような伝説級の話は聞いた事はあるが、そのような花は未だかつて見た事はない」

 

「或いは、もしかして、泉の側に咲くと聞いた事がある」

 

「いやアソコは危険過ぎる」

 

「な、親父、アソコって黒き呪いの泉だな?」

 

あらゆる病を治す花が咲いている場所が呪いの泉って。不謹慎にもシリアスな場面で僕は少し笑いそうになったけど、それはそうか。アンデッド系のみに効果のある花って、めっちゃ毒々しそうだし、臭そ。ま、がいこつの親父さんの病気を治すことを目標に黒き呪いの泉に向かうとして、しかし気になるなー。誰が何の目的でやったんだろうな。

 

「がいこつの親父さん、あるかどうか分からないけど、とりあえず僕達その呪いの泉に向かってみますよ!がいこつに色々世話になっているし」

 

「マスター・・・」

 

「がいこつだって、親父さんに元気になってもらいたいでしょ、明朝出発すんぞ!」

 

「恩に着るぜマスター」

 

親父さんの骨の崩れ具合から全然ゆっくりはしていられないけど、今夜は作戦会議を開いて早く休もう。今まで目的なく旅をしてきたから、少しモチベーション上がってるかも。僕はちょっぴり上がる気持ちを抑えつつ、明日への期待を膨らませた。

 

 

 

死者の渓谷の村 中編